大津の商店街を町屋ホテルで活性化しよう ———
次々に、思ってもみなかった展開に!

「 HOTEL 講 大津百町」は滋賀県大津市に、2018年8月にオープンした商店街ホテルである。このホテルの事業主であり、オーナーは谷口工務店。
谷口工務店は滋賀県竜王町に本社を構える、社員80人ほどの会社だ。設計も大工も全員社員で、上質な木の住宅を得意としている。谷口弘和社長が1994年に創業。父親も大工、谷口氏自身も大工だった経験から、職人を育てることを大切に考えてきた。
竜王町の本社には、全国から一流の職人、設計士を目指して若い人が集まってくるという。
工務店がホテルのオーナーという例はほとんど聞かない。ホテルをやろうと決心するには、どういう経緯があったのか?また、それは谷口工務店の事業とどう関わっているのか?代表取締役社長である、谷口弘和氏に話を聞いた。

(文・構成/下田結花 モダンリビング発行人)

いつか日本一愛される工務店になりたい、とずっと思ってきました。それ以前に、滋賀県一愛される工務店になろう。そのためにはまず、県庁所在地である大津に支店を出すことだ、と大津の街を巡ってみたのです。すると思った以上に商店街はさびれていて、空家も多い。大津には知り合いもおらず最初は苦労したのですが、 何度も商店街に通い、徐々に商店街の方と関係を築いて、5〜6軒紹介してもらえました。
そんな中、大津の駅前の和菓子屋さんが店を閉めると聞き、2016年に支店を出したのです。それが谷口工務店 「大津百町スタジオ」です。
予想外だったのは、大津に支店を出したら関西方面のお客様が増えると期待していたのですが、竜王町の本社のほうのお客様が増えたこと。車でいらっしゃるお客様には、インターを降りてすぐの竜王の方が便利だったようです。(笑)
「大津百町スタジオ」に置く家具を選ぶ時に、建築家の竹原  義二さんに、インテリアショップ、ロゴバを紹介してもらいました。北欧家具との衝撃的な出会いでした。その場ですぐに北欧家具を購入。それだけでなく、インテリアショップをやりたいと、ロゴバさんにお願いしたのです。そうした経緯で、「大津百町スタジオ」で「プラスロゴバ」という名前で、北欧家具のショップも併設することになりました。
里山十帖(ホテル)を経営する、「自遊人」の岩佐十良さんのセミナーに参加したのもその頃です。岩佐さんと話をしている中で、「商店街ホテル」という構想が出てきました。
ホテルによって人が集まり、商店街で、飲んで食べて買い物をすることで、商店街も潤う。

“いつか日本一愛される工務店になりたい、
とずっと思ってきました。
それ以前に、滋賀県一愛される工務店になろう。”

大津の商店街を活性化することで、町の人にも認めてもらえる。古い町家を直せば、大工のモデルハウスにもなるし、そこに北欧家具を置いて販売することもできる。これはいい! 素晴らしいプランだ、と思いました。
しかし、岩佐さんは、町屋ホテルは最低6軒ないと採算が取れないと言います。支店づくりで物件を探している時に、空家の町家はすでに見つけていましたが、銀行は工務店のホテル事業には、なかなか投資してくれませんでした。
そんな中、 「大津百町スタジオ」の場所を探していた時知り合った大津の町おこしのグループの仲間から、商店街ホテルなら経産省の助成金が降りるかもしれない、という話があったのです。

地方創生
空家対策
商店街活性化

国が目指すこの三点に合致するからということで、早速、手続きをしたら、すっと申請が通ってしまった。そうすると、銀行も無担保で融資をしてくれることに!銀行からの融資金額は2億2000万、助成金9000万で、商店街ホテルの町家再生プロジェクトをスタートすることになりました。
もちろん、私もこんな大事業に踏み込んでいいのか、と随分迷いました。宿泊業なんて考えたこともなかったのですから。(谷口弘和氏・談)

(文・構成/下田結花  モダンリビング発行人)